温泉の種類は?11種類の泉質と特徴を徹底解説【完全ガイド】

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「温泉の種類って10種類?11種類?」「温泉の種類は正式に何種類?」

知っているようで知らなかった、温泉の種類。温泉大国、日本。全国各地に魅力的な温泉地が点在しますが、そのお湯の性質、「泉質(せんしつ)」がそれぞれ異なります。泉質が違えば、その色や香り、肌触り、そして身体への効能も大きく変わってきます。

この記事では、温泉の専門知識を基に、日本の温泉法で定められている10種類の「療養泉」に、最もポピュラーな「単純温泉」を加えた合計11種類の泉質について、それぞれの特徴、期待できる効能、そして代表的な温泉地を、図解や一覧表を交えながら徹底的に解説します。

目次

そもそも温泉とは?法律で定められた温泉の定義

私たちが普段「温泉」と呼んでいるものには、法律による明確な定義があります。1948年に制定された「温泉法」によると、「温泉に含まれる化学成分」による泉質の分類です。温泉とは地中からゆう出する温水、鉱水、及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で、以下のいずれかの条件を満たすものと定められています。

  1. 源泉から採取されたときの温度が25度以上であること。
  2. 指定された温泉に含まれる化学成分、ナトリウムイオン、炭酸水素イオン、硫黄、鉄分などの19物質のうち、どれくらい含まれているかによって10種類(11種類)に分けられています。

つまり、「温度が高い」か「特定の成分が豊富に含まれている」かのどちらかを満たせば、法律上は「温泉」となるのです。そして、特に治療の目的に利用できる温泉で、特定の成分が一定量以上含まれるものを「療養泉」と呼び、泉質名が付けられます。

温泉の種類と泉質、その違いとは?

【完全ガイド】温泉水の11種類の泉質を徹底解説

それでは、本題である11種類の泉質について、一つひとつ詳しく見ていきましょう。温泉は、含有成分の種類と量によって、大きく11種類に分類されます。

1. 単純温泉

特徴

温泉水1kg中の溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg未満で、湧出時の泉温が25∘C以上の温泉。含有成分が全体的に薄いため、無色透明・無味無臭で、肌への刺激が極めて少ないのが特徴です。誰にでも優しいことから【家族の湯】とも呼ばれます。

効能
  • 疲労回復、ストレス緩和、健康増進
  • 自律神経不安定症、不眠症、うつ状態の緩和
  • 脳卒中後のリハビリ
  • (アルカリ性のもの)古い角質を除去する美肌効果
代表的な温泉地
  • 下呂温泉(岐阜県)
  • 由布院温泉(大分県)
  • 道後温泉(愛媛県)
入浴のポイント・注意点:
  • 禁忌症は特に無く、赤ちゃんからご高齢の方まで安心して楽しめる。
  • アルカリ性の場合は湯上がりに肌が乾燥しやすいため、保湿ケアを推奨。

2. 塩化物泉

特徴

温泉水1kg中に塩分(主としてナトリウムイオン)が1,000mg以上含まれる温泉。舐めるとしょっぱいのが特徴です。入浴すると塩分が肌に付着して薄いヴェールを作り、汗の蒸発を防ぐため、保温効果が非常に高いことから**【熱の湯】【温まりの湯】**と呼ばれます。

効能
  • 冷え性、末梢循環障害
  • 関節痛、筋肉痛
  • 切り傷、やけど、慢性皮膚病
  • 慢性婦人病
代表的な温泉地
  • 熱海温泉(静岡県)
  • 片山津温泉(石川県)
  • 指宿温泉(鹿児島県)
入浴のポイント・注意点:
  • 湯冷めしにくい反面、湯あたりしやすいため長湯に注意。
  • 高血圧、腎臓病、むくみやすい方は特に長湯を避ける。

3. 炭酸水素塩泉

特徴

炭酸水素イオンを主成分とする温泉。石鹸のような働きで肌の表面を軟化させ、皮脂や古い角質を乳化させて洗い流す作用があります。肌がスベスベになることから【美肌の湯】【清涼の湯】として特に女性に人気です。

効能
  • 皮膚を滑らかにする(美肌効果)
  • 切り傷、やけど、慢性皮膚病
  • (飲用)胃酸を中和し、胃の働きを活発にする
代表的な温泉地
  • 嬉野温泉(佐賀県)
  • 小谷温泉(長野県)
  • 川湯温泉(和歌山県)
入浴のポイント・注意点:

湯上がりは肌の水分が蒸発しやすいため、入浴後の保湿ケアが重要。

4. 硫酸塩泉

特徴

硫酸イオンを主成分とする温泉。カルシウム、ナトリウム、マグネシウムなどの陽イオンとの組み合わせで「カルシウム-硫酸塩泉」「ナトリウム-硫酸塩泉」「マグネシウム-硫酸塩泉」に分かれます。鎮静作用が高く、傷や痛みを癒す効果から【傷の湯】【脳卒中の湯】とも呼ばれます。

効能
  • 動脈硬化症、高血圧症
  • 切り傷、やけど、慢性皮膚病
  • 関節痛、筋肉痛
  • 肌にハリと潤いを与える(美肌効果)
代表的な温泉地
  • 法師温泉(群馬県)
  • 天城温泉郷(静岡県)
  • 山代温泉(石川県)
入浴のポイント・注意点:

入浴における禁忌症は特に無い。

飲泉が可能な場合もありますが、飲用するとお腹が緩くなることがあるため、胃腸の弱い方は注意。

5. 二酸化炭素泉(炭酸泉)

特徴

お湯に炭酸ガス(二酸化炭素)が1,000mg/kg以上溶け込んでいる温泉です。入浴すると全身に銀色の炭酸の泡が付着するのが特徴。ぬるめのお湯でも血管を拡張させて血行を促進するため、身体が芯から温まります。その作用から**【心臓の湯】**とも呼ばれます。

効能
  • 冷え性、末梢循環障害
  • 高血圧症、動脈硬化症
  • 切り傷、やけど
代表的な温泉地
  • 長湯温泉(大分県)
  • 有馬温泉(兵庫県・銀泉)
  • 小坂温泉郷(岐阜県)
入浴のポイント・注意点:

炭酸ガスが揮発しやすいため、加温・循環の少ない「源泉かけ流し」がおすすめ。

6. 含鉄泉

特徴

鉄分を多く含む温泉。湧出時は無色透明ですが、空気に触れると酸化して赤茶色や黄褐色に濁るのが特徴です。金気臭(かなけしゅう)と呼ばれる独特の匂いがすることもあります。体をよく温め、貧血に効果があることから【婦人の湯】として古くから親しまれています。

効能
  • (飲用)鉄欠乏性貧血
  • 月経障害、更年期障害
  • リウマチ性疾患
代表的な温泉地
  • 有馬温泉(兵庫県・金泉)
  • 黄金崎不老ふ死温泉(青森県)
  • 吉川温泉(京都府)
入浴のポイント・注意点:
  • タオルが赤茶色に染まることがあるので注意。
  • 飲用する場合は胃腸への負担を考慮し、食後に少量から試すのが良い。

7. 酸性泉

特徴

水素イオンを多く含み、pH値が低い(酸性が強い)温泉です。殺菌力が非常に高く、肌にピリピリとした刺激を感じることがあります。その強力な殺菌効果から**【殺菌の湯】**とも呼ばれます。

効能
  • アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬などの慢性皮膚病
  • 耐糖能異常(糖尿病)
代表的な温泉地
  • 草津温泉(群馬県)
  • 玉川温泉(秋田県)
  • 酸ヶ湯温泉(青森県)
入浴のポイント・注意点:
  • 刺激が非常に強いため、皮膚が弱い方、高齢者、傷がある方は避けるか短時間にする。
  • 目に入らないよう注意し、湯上がりには必ず真水で体を洗い流す。

8. 含よう素泉

特徴

比較的新しく(2014年改訂で追加)療養泉に加わった泉質で、ヨウ素イオンを10mg/kg以上含みます。非火山性の温泉に多く、湧出後、時間とともに黄色から褐色に変色することがあります。

効能

(飲用)高コレステロール血症

代表的な温泉地
  • 新屋温泉(青森県)
  • 白子温泉(千葉県)
  • 新潟温泉(新潟県)
入浴のポイント・注意点:
  • 甲状腺の疾患がある方は、飲用の際に必ず医師に相談する。

9. 硫黄泉

特徴

ゆで卵が腐ったような独特の匂い(硫化水素臭)と、白く濁ったり、湯の花が見られたりするのが特徴的な、「温泉らしい温泉」です。毛細血管を拡張させる作用があり、様々な生活習慣病に効果が期待できることから**【生活習慣病の湯】**として知られています。

効能
  • 高血圧症、動脈硬化症、糖尿病
  • 慢性皮膚病、慢性婦人病
  • 関節痛
  • シミ予防(メラニン生成抑制作用)
代表的な温泉地
  • 有馬温泉(兵庫県・金泉)
  • 黄金崎不老ふ死温泉(青森県)
  • 吉川温泉(京都府)
入浴のポイント・注意点:
  • 喘息など気管支が弱い方は注意が必要。
  • 貴金属(特に銀製品)は黒く変色するため、必ず外してから入浴する。

10. 放射能泉(ラドン泉)

特徴

微量の放射線(ラドン)を含む温泉です。放射線と聞くと不安になるかもしれませんが、人体に有益な刺激を与え、細胞の活性化や免疫力向上を促す「ホルミシス効果」をもたらすレベルの微量なもので、安全です。その幅広い効能から【万病の湯】とも呼ばれます。

効能
  • 痛風、関節リウマチ、強直性脊椎炎
  • 神経痛、筋肉痛、関節痛
  • 自律神経系の調整、免疫力向上
代表的な温泉地
  • 有馬温泉(兵庫県・金泉)
  • 黄金崎不老ふ死温泉(青森県)
  • 吉川温泉(京都府)
入浴のポイント・注意点:
  • 入浴中はゆっくりと深呼吸をすると、呼吸からラドンを取り込めてより効果的。
  • 急性疾患のある方や妊娠初期の方は念のため入浴を避けるのが望ましい。

11. その他の療養泉(含アルミニウム泉・フッ素・含銅-鉄泉など)

特徴

これまで紹介した9つの療養泉と単純温泉以外にも、特殊な成分を含む療養泉が存在します。例えば、ミョウバンを含む「含アルミニウム泉」や、銅と鉄を含む「含銅-鉄泉」など、旧泉質名に基づく分類も一部残っています。

効能

(含アルミニウム泉)殺菌作用、皮膚を引き締める収れん作用
(含銅-鉄泉)貧血

代表的な温泉地

塚原温泉(大分県・含アルミニウム泉)伊香保温泉(群馬県・含銅-鉄泉を含む硫酸塩泉など)

入浴のポイント・注意点:
  • 入浴中はゆっくりと深呼吸をすると、呼吸からラドンを取り込めてより効果的。
  • 急性疾患のある方や妊娠初期の方は念のため入浴を避けるのが望ましい。

お悩み・目的別のおすすめ泉質

あなたの今の気分や体の悩みに合わせて、ぴったりの温泉水を見つけてみましょう!

💧 美肌を目指したい!

  1. 🥇 炭酸水素塩泉: 皮脂を乳化させ、肌をなめらかに。天然のクレンジング!
  2. 🥈 硫酸塩泉: 肌にハリと潤いを与える。アンチエイジングに。
  3. 🥉 アルカリ性単純温泉: 古い角質を優しく除去し、つるつる肌へ。

♨️ とにかく温まりたい!冷え性を改善したい!

  1. 🥇 塩化物泉: 塩分のヴェールで体ポカポカ。湯冷めしにくい!
  2. 🥈 二酸化炭素泉: 炭酸パワーで血行促進。体の芯から温まる。
  3. 🥉 硫黄泉: 毛細血管を広げ、血の巡りをサポート。

💪 肩こり・腰痛・疲れを癒したい!

  1. 🥇 塩化物泉: 温熱効果で筋肉のこわばりをほぐす。
  2. 🥈 硫酸塩泉: 鎮静作用で痛みを和らげる。
  3. 🥉 放射能泉: 神経痛や関節痛の緩和に。

🌿 生活習慣病が気になる…

  1. 🥇 硫黄泉: 血圧や血糖値が気になる方に。
  2. 🥈 硫酸塩泉: 動脈硬化の予防に。
  3. 🥉 放射能泉: 痛風の改善に。

FAQ(よくある質問)

温泉の種類と泉質は、どちらが重要ですか?

どちらも重要ですが、泉質がより重要だと言えます。泉質は温泉の効能を決定づける要素であり、入浴する人の健康や美容に直接影響します。一方で、温泉の種類(利用方法)は、その泉質をどのように提供しているかを示します。

温泉の匂いや色は、何によって決まるのですか?

主に泉質によって決まります。例えば、硫黄泉は硫黄成分によって独特の匂いがしますし、鉄泉は空気に触れて酸化することで赤茶色に濁ります。温泉によっては、含まれる成分によってエメラルドグリーンや乳白色になることもあります。

源泉かけ流しと循環ろ過式、どちらが良いですか?

源泉かけ流しは、温泉の成分が薄まることなく、最も純粋な状態で入浴できます。より強い効能を求める方におすすめです。一方、循環ろ過式は衛生面が管理されており、多くの人が安心して利用できるメリットがあります。どちらが良いかは、何を重視するかによって異なります。

まとめ

今回は、温泉の基本から、日本に存在する11種類の泉質について、特徴や効能、注意点を一覧表などを使いながら詳しく解説しました。

【一目でわかる!】11泉質の特徴 早わかり一覧表

泉質分類泉質の特徴期待できる主な効能代表的な温泉地
単純温泉無色透明・無味無臭、肌に優しい疲労回復、健康増進、ストレス緩和下呂温泉(岐阜県)、由布院温泉(大分県)、道後温泉(愛媛県)
塩化物泉しょっぱい、保温効果が高い冷え性、関節痛、切り傷、慢性婦人病熱海温泉(静岡県)、片山津温泉(石川県)、指宿温泉(鹿児島県)
炭酸水素塩泉肌がスベスベになる(クレンジング効果)皮膚病、切り傷、やけど、糖尿病嬉野温泉(佐賀県)、小谷温泉(長野県)、川湯温泉(和歌山県)
硫酸塩泉肌にハリを与える、鎮静作用動脈硬化症、皮膚病、リウマチ法師温泉(群馬県)、天城温泉郷(静岡県)、山代温泉(石川県)
二酸化炭素泉炭酸の泡が付着、血行促進高血圧、動脈硬化、冷え性長湯温泉(大分県)、有馬温泉(兵庫県・銀泉)、小坂温泉郷(岐阜県)
含鉄泉空気に触れると赤茶色に濁る鉄欠乏性貧血、月経障害有馬温泉(兵庫県・金泉)、黄金崎不老ふ死温泉(青森県)、吉川温泉(京都府)
酸性泉強い酸性、殺菌力が高い慢性皮膚病(アトピーなど)、糖尿病草津温泉(群馬県)、玉川温泉(秋田県)、酸ヶ湯温泉(青森県)
含よう素泉ヨウ素を含む、黄褐色に変色高コレステロール血症(飲用)新屋温泉(青森県)、白子温泉(千葉県)、新潟温泉(新潟県)
硫黄泉独特の匂い、白濁、湯の花高血圧、糖尿病、動脈硬化症万座温泉(群馬県)、箱根温泉郷(神奈川県)、別府温泉(大分県)
放射能泉微量の放射線(ラドン)を含む痛風、関節リウマチ、神経痛三朝温泉(鳥取県)、増富温泉(山梨県)、有馬温泉(兵庫県・銀泉)
その他療養泉アルミニウム、銅、泥など特殊成分泉質により異なる(皮膚病、貧血など)塚原温泉(大分県・含アルミニウム泉)、伊香保温泉
別府温泉(大分県)(群馬県・含銅-鉄泉を含む硫酸塩泉など)

この記事を参考に、ぜひ次の旅行では泉質に注目して、あなただけの特別な温泉水を見つける旅に出かけてみてはいかがでしょうか。

参考文献

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