「ちゃんと休んでいるはずなのに、疲れが抜けない」「スマホを置いて、ただぼんやりしたい」——そんな感覚を覚えたことはないでしょうか。
現代の「湯治」が注目を集めているのは、そうした「日常の疲れを根本からリセットしたい」という切実なニーズに、温泉が応えているからだと思います。
今回、温泉水ラボ編集長・ookiniが訪れたのは、大分県別府市・鉄輪(かんなわ)温泉。なかでも、伝統的な湯治文化を現代的な感覚で受け継いだ宿「柳屋(やなぎや)」を拠点に、飲める温泉水(飲泉)・地獄蒸し自炊・街歩きをたっぷり体験してきました。
この記事を読めば、「湯治ってなんだか敷居が高そう」という先入観がきっと変わるはずです。

編集長 ookini
この記事は、温泉水ソムリエの 編集長ookini(温泉水の美容・健康効果に魅せられ、その最適な活用法を探求する専門家)が、自らの宿泊体験と温泉水ソムリエとしての知見をもとにレポートします。
1. 鉄輪温泉とは|街全体が湯治場

大分県別府市に位置する鉄輪(かんなわ)温泉は、日本でも屈指の湧出量を誇る別府八湯のひとつ。鎌倉時代に一遍上人が開いたとされる由緒ある温泉地で、古くから「長期滞在して身体を整える場所=湯治場」として親しまれてきました。
温泉街を歩くと、路地のあちこちから白い湯けむりがもうもうと立ちのぼり、ほのかに硫黄の香りが漂います。「温泉が生活の中にある」という感覚が、訪れた瞬間から伝わってくる場所です。
泉質:塩化物泉(食塩泉)
鉄輪温泉の主な泉質は塩化物泉。塩分を含む湯が皮膚をやさしくコーティングするため、湯冷めしにくく、体を芯から温める保温効果が特徴です。冷え性の改善・疲労回復・デトックス目的の湯治にも、古くから用いられてきた泉質です。
街の過ごし方
鉄輪には地元の人が日常的に使う共同浴場が点在しています。観光地化されていない素朴な小さな浴場もあり、ひとりで静かに浸かる時間は、それだけで旅の収穫になります。足湯スポットも各所にあるので、散策の合間に気軽に立ち寄れます。
2. 湯治宿「柳屋」とは|”暮らすように泊まる”コンセプト

今回宿泊した「柳屋」は、明治期から続く湯治宿をリノベーションし、2014年に現在のスタイルへと生まれ変わった宿です。
古い日本家屋の骨格を残しながら、北欧家具やモダンなアートが自然に溶け込んだ空間は、「宿」というより「洗練された別宅」のよう。そして造形作家・望月通陽氏がデザインしたのれんをくぐります。ここでは、ホテルのように至れり尽くせりのサービスを受けるのではなく、ゆっくりと自分のペースで時間を使い、自分で食事を整える。それこそが「湯治」であり、現代人の疲れを根本から癒やすカギになります。

ウェルカムドリンクと、館内の地獄窯で蒸されたシフォンケーキがさらに旅の疲れを癒します。
3. 柳屋の客室・施設・泉質
本館とアネックス
本館は昔ながらの湯治宿の雰囲気を色濃く残し、畳の香りに包まれた落ち着いた空間。アネックス(新館)はよりモダンでデザイン性が高く、機能的な造りで長期滞在でも快適に過ごせます。
今回はアネックスのベッドタイプの客室を選択。レトロな風合いの中に現代の快適さが共存していて、チェックインした瞬間から気持ちがほぐれていくのを感じました。


温泉(泉質と湯の特徴)

柳屋の温泉は、1階の内風呂と2階の露天風呂の2種類。時間帯によって男女が入れ替わります。泉質は主にナトリウム−塩化物泉。・源泉99.6℃・pH3.3。保温効果が高く湯冷めしにくいのに加え、メタケイ酸(シリカ)を豊富に含み、肌をしっとりと整えてくれる「美肌の湯」でもあります。
この源泉は、温泉浴だけでなく、館内の地獄蒸し釜の蒸気としても活用されています。お湯も蒸気も、同じ天然の温泉水から生まれているのです。
談話室とライブラリー


談話室は常時開放されており、囲炉裏や掘りごたつでくつろぎながら過ごせます。自炊した食事をここで食べることもできるため、他の宿泊者とゆるやかな交流が生まれることも。湯治中の「何もしない時間」をゆったり受け止めてくれる空間です。
4. 地獄蒸し自炊体験|食材から味が変わる驚き

柳屋滞在の最大の楽しみが、共有キッチンにある「地獄蒸し釜」を使った自炊です。24時間蒸気が立ちこめる釜は迫力満点で、それだけでテンションが上がります。
地獄蒸しとは?

摂氏100度に迫る温泉蒸気で食材を一気に蒸し上げる調理法です。塩分を含む蒸気が食材を包み込むため、調味料を最小限に抑えても素材本来の旨味と甘みが驚くほど引き出されます。油を使わずヘルシーで、ビタミン類など栄養素の流出も少ない——まさに湯治食にふさわしい調理法です。
共有キッチンの設備
スタッフが丁寧に使い方を教えてくれるので、初めてでも安心。設備は充実しており、宿泊者であれば自由に使えます。
- 調理器具: 蒸し器、ザル、包丁、まな板、鍋などはすべて完備
- 家電: 冷蔵庫(部屋ごとのカゴあり)、電子レンジ、トースター、炊飯器
- 調味料: 塩、醤油、油、味噌などの基本調味料が揃っており、少量から利用可能
- 食器: 大分産の小石原焼や現代的なプレートも用意されており、盛り付けも楽しめる
宿泊している間は、調理場を自由に使うことができるため、まさに「住むように暮らす」ことができます。
食材の調達スポット

宿の近くのスーパー「マルショックやまなみ店」で食材を調達し、今回は地元産の旬野菜・鶏肉・海鮮などを買い込みました。スーパーに並ぶ品揃えを見るだけでもなかなか楽しく、気づけばカゴいっぱいになっていました。
蒸し上がった野菜の甘みと、海鮮の旨味は、想像以上のものでした。「これ、どこかで食べたことがある味だ」と思ったら、それは素材そのものの味でした。
食材の調達スポット
| 店名 | 特徴 | 徒歩 |
|---|---|---|
| マルショック(スーパー) | 肉・飲み物・日用品。旬の地魚や地元野菜が並ぶ | 約7〜8分 |
| ことぶきや | 老舗鮮魚店 | 近隣 |
| ひろみや | 地元八百屋。蒸しに合うさつまいも・かぼちゃが揃う | 近隣 |
5.柳屋内レストラン「オット・エ・セッテ大分」


自炊が面倒な日や、少し特別な夜に頼れるのが、柳屋に併設されたイタリアンレストラン「オット・エ・セッテ大分」。シェフ・梯(かけはし)氏が手がける料理は、温泉地ならではの「地獄蒸し」を軸に、大分の食材とイタリア料理を融合させた独自のスタイルです。
温泉蒸気で素材の旨味を引き出すメイン料理は、油や調味を控えながらも驚くほど滋味深く、体にやさしく染み渡ります。地元の名店としても評判の一軒で、宿泊者以外の来店も多いようです。
6.館内飲泉体験|腸が動く、体が変わる

柳屋をおすすめする理由のひとつが、館内で飲泉ができることです。
入浴後に立ち寄りやすい場所に設置された飲泉スポットでは、24時間絶えず温泉水が流れ続けています。口に含むと、ほんのり温かく、塩味と独特のミネラル感が広がりました。刺激的な味ではなく、「じんわりと体の中に染み込んでいく」という感覚です。
塩化物泉の飲泉は、胃腸の働きをサポートする効果が期待されている泉質。実際、翌朝のお通じが普段よりはっきりとスムーズで、「腸がしっかり動いた」という体感を得ることができました。入浴とあわせて、内側からも温泉の恩恵を受けられる——これが湯治宿ならではの体験です。
7. 柳屋の基本情報 アクセス・料金帯・予約方法
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 宿名 | 湯治 柳屋(やなぎや) |
| 住所 | 〒874-0043 大分県別府市鉄輪井田2組 鉄輪銀座通り |
| 泉質 | ナトリウム-塩化物泉(美肌・保温効果) |
| 客室タイプ | 本館(和室)・アネックス(洋室ベッドタイプ) |
| 設備 | 地獄蒸し釜・共有キッチン・談話室・飲泉スポット |
| 予約方法 | 公式ホームページからの予約が最安値となっているためおすすめです。公式サイトはこちら |
| 料金 | ※公式サイトにてご確認ください |
| アクセス | 別府駅よりバスで約20分(亀の井バス「鉄輪」停留所下車) |
料金・チェックイン時間・予約方法は公式サイトまたはお電話でご確認ください。変更になる場合があります。
よくある質問
まとめ
今回は別府・鉄輪温泉の旅館「柳屋」を拠点にした湯治旅レポートでした。飲泉・薬草蒸し・地獄蒸しと、「湯治柳屋」でできる湯治をたっぷりお伝えできたでしょうか。
- 鉄輪温泉の泉質は塩化物泉。保温・デトックス効果が高く、湯治に最適
- 柳屋は館内飲泉・地獄蒸し釜・共有キッチン付きの本格湯治宿。初めてでも安心
- 地獄蒸しはスーパーで調達した食材が「別物」の旨さに。自炊の楽しさが体験できる
- 飲泉で翌朝の腸の動きが変わる——内側から温泉の効果を実感できる
- 温泉街の共同浴場・足湯も含め、街全体が湯治場
こんな人におすすめ柳屋は、いわゆる「観光旅行」とは一線を画す宿です。効率よく名所を巡りたい方より、日常のリズムをいったん手放して、ゆっくり自分を取り戻したい人にこそ響く宿だと思います。
特にこんな方に自信を持っておすすめします。
- 「ちゃんと休んでいるのに疲れが抜けない」と感じている人 — スマホ断ち・地獄蒸し・源泉かけ流しという三拍子が、じわじわと疲れを溶かしてくれます。
- ひとり旅初心者・ひとり旅が好きな人 — 自分のペースで食事・入浴・休憩を組み立てられる自炊スタイルは、ひとり旅の自由さと完璧に相性が良いです。
- 温泉の「本物の力」を体で感じたい人 — ナトリウム−塩化物泉の源泉かけ流し(99.6℃・pH3.3)、飲泉、そして地獄蒸しと、温泉水を入浴・食・飲用の三面から体験できる宿は多くありません。
- 「湯治」に興味はあるけど、敷居が高いと思っていた人 — 古い湯治宿の雰囲気を残しながら、モダンな内装と整ったキッチン設備があるので、初めてでも戸惑いなく過ごせます。
- ひとりでいる時間をおいしく過ごしたい人 — 地元のスーパーで食材を選ぶ楽しさ、地獄蒸しで仕上げる料理の感動、談話室でのゆるやかな時間。「おひとりさまの豊かさ」がここには詰まっています。

ひとことで言えば、柳屋は「疲れを持ち込んで、整えて帰る宿」です。 湯治という言葉が少し特別に聞こえるとしたら、それはまだ柳屋ぜひ一度柳屋さんへ!
次回|パート2:鉄輪周辺〜別府の町散策へ
湯治の拠点・鉄輪を飛び出して、別府の町をぐるりと歩いてみました。温泉地としての顔だけじゃない、別府の魅力をお届けします。どうぞお楽しみに!








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